F1界において、あらゆる記録を塗り替えた皇帝ミハエル・シューマッハが2度目の引退の際にいったコトバ。
1991年にF1デビューしたミハエル・シューマッハは、94年・95年とベネトンで2度のワールドチャンピオンに輝いた後、当時低迷を続けていた名門フェラーリへと移籍する。
その後、96年・97年はウィリアムズと、98年・99年はマクラーレンとチャンピオン争いを繰り広げながらも惜敗。しかし2000年、ついにフェラーリに1979年以来となるドライバーズタイトルをもたらし、自身3度目のワールドチャンピオンの座に輝いた。
2000年鈴鹿GP、21年ぶりにフェラーリにタイトルがもたらされることが決まったその場に、ボクはいた。
タイトルを争っていた相手は、98年・99年にフェラーリを阻んでチャンピオンに輝いたマクラーレンのミカ・ハッキネン。シューマッハが優勝すればタイトルが決まるそのレースで、途中までレースを引っ張っていたのは、互いに「最強で最高」と認め合うそのライバルだった。
レースも終わりが見え始めたころ、まさに天の采配というのか、ふいに空から小雨が降り始めた。
雨は、降り始めが一番危ないと言われる。コース上にたまったほこりやタイヤカスなどを、降り始めた雨水が浮かして、非常に滑りやすい状態にするからだ。
そんな運転しづらいコンディションでも、圧倒的な速さを見せるのがシューマッハ。
みるみるうちにトップを走るハッキネンとの差を詰めていく。そしてレース最後のピットストップを終え、見事ハッキネンの前に出た。
その瞬間、サーキットが大歓声に包まれたことを、よく覚えている。
その後のフェラーリは、まさに「帝国」を築く。
2000年から2004年まで、5年連続でタイトルを獲得。
シューマッハ自身も、さまざまな記録を塗り替えた。
7度のワールドチャンピオン獲得、最多優勝回数、最多ポールポジション獲得数など、おそらく今後もそう簡単には破られることがないであろう記録を打ち立てた。
だが、どんな栄光の時代にも終焉は訪れる。
2005年、2006年とルノーのフェルナンド・アロンソにチャンピオンの座を奪われ、シューマッハはついに、引退という選択を決意した。
ところが、時が経って2010年、彼はメルセデスグランプリから復帰することになる。
ミハエル・シューマッハ、41才の時だ。
だが、この復活劇は、かつてのような栄光を再びもたらすことはなかった。
才能あふれる若いドライバーたちの後塵を拝すばかりで、なかなかいい成績が残せない。かつての偉大なるチャンピオンに向けられる目は、レースを経るたびに厳しくなるばかりだった。
そして2012年、一度も表彰台の真ん中に立つことなく、2度目の引退を決意するのだった。
今日のコトバは、その2度目の引退をする際の会見でシューマッハが語ったコトバから。
※以下、こちらの記事より引用
「人生のバックミラーを覗き込んでみると、自分が満足し、笑っているのが分かる。ふたつの異なるキャリアを過ごした。そのひとつにおいてはすべてを勝ち取った。ふたつめのキャリアでは負けることの意味を知った」
「負け方を学んだ。でもそのおかげでさらに成長し、忍耐強くなった。それは自分の年齢の影響もあるけどね。今僕は自分が何を成し遂げてきたかを考え、自分自身に満足しなければならない」
そして、どういう存在として人々の記憶に残りたいかと聞かれ、シューマッハはこう答えた。
「皆が僕をレース界の伝説と呼ぶ。でも僕自身は、決して逃げることがなかったファイターと呼ばれたい」
※引用ここまで。
F1で未だ誰も破ることのできない、圧倒的な記録を残したミハエル・シューマッハ。
自分で「レース界の伝説」と言えちゃうあたり、さすがでしかないし、何の反論もできないのだけど、そのシューマッハが自身を指して「決して逃げることがなかったファイター」といったコトバが、ボクの心に突き刺さっている。
サイボーグと言われながらも、時折心の弱さを見せたシューマッハ。
圧倒的な強さを誇る彼に対しては、ファンもいれば、アンチもいた。
フェラーリという、F1の中でも最も長い歴史をもち、伝統を誇るチームのドライバーというプレッシャーはいかほどのものか、きっと想像も追いつかない。
偉大な、歴史に名を残すほどの偉大なドライバーが自分の誇りとして挙げたことは、それら困難から決して逃げなかったことだった。戦い続けたことだった。
才能とか、環境とか、自分がコントロールできない要素は、確かにある。
それを「ない」とはいえない。
でも、圧倒的な成果を残した人が挙げるのは、自分の才能ではなかった。
だから、このコトバは、ボクのバイブルとなっている。
「逃げない」というのは、心の強さだ。
肉体的な強さは先天的なものがあったとしても、心の強さは後天的なものだとボクは思う。だから、ボクにも「決して逃げることがなかったファイター」になれるチャンスはあるはずだ。
逃げたくなるような困難を前にした際、このコトバがボクの背中をグッと支えてくれている。
そんなミハエル・シューマッハは、2013年の年末、スキー中の事故でこん睡状態に陥った。
色々と情報は錯そうしているが、2015年3月現在、退院して、リハビリ中だと伝えられている。
ボクは彼の回復を信じている。
どんな苦しい状況にあっても、きっと彼なら乗り越える。
だって彼は「決して逃げることがなかったファイター」なのだから。
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