ドリカムのボーカル、吉田美和のソロアルバムから、とても切ない一曲を。
個人的には、日本でも3本の指に入る歌手だと思っている。
そんな彼女の1枚目のソロアルバム「beauty & harmony」に収録されているのが、この曲だ。
まずはこのアルバムのすごさについて説明しなくてはいけないだろう。
ギターにデイヴィッド・T・ウォーカー、ベースにチャック・レイニー、テナーサックスにマイケル・ブレッカー、パーカッションがラルフ・マクドナルド、ドラムはハービー・メイソン、トランペットにグレッグ・アダムス。
70~80年代のソウル・フュージョンを聴いてきた人間からすれば、「なんだそれ!」ってくらいの、垂涎のメンバー。
これでもしボーカルが、日本のアイドルとかだったら残念なことこの上ないんだけど、吉田美和ってのがまた(そしてライブDVDを見る限り、吉田美和がこのメンバーからホントに愛されているのが伝わってくるのがまた)。
特にチャック・レイニーはベースを弾いているボクにとってのヒーローの1人で。
まぁとにかく、演奏を聴くだけでもとっても大きな価値のあるアルバム。
で、その中の1曲が、今日PickUpした「バイバイ」。
とても、とても切ない歌詞。
そしてそれを見事に表現したアレンジ。
歌詞と演奏が完全に一体化して、一人の女性の心模様を見事に表している。
アレンジの妙というか、アレンジのすごさを初めて実感した曲かもしれない。
歌詞を全部載せちゃうと色々と問題があるので(ホントは一部でもダメだけど)、ぜひ検索してみてほしい。
この曲の歌詞は、ぜひ一曲を通して読んでみてほしい。
※以降、歌詞を読んだ上で、あるいは歌詞を読みながら、という前提で記載。
最初は穏やかに、冷静に、話を受け止める。
受け止めたフリをしている。
そんな心情を表すかのような、おだやかな、でも少し切ないニュアンスのある演奏。
デイヴィッド・T・ウォーカー特有の、穏やかに流れる水のようなギターが見事な空気を作り上げる。
ばかだな、と相手を責めながら、「もう会『わ』ないんだね」というコトバが、グッと感情を抑えている姿を、必死で平静を保とうとしている姿を、余裕ぶって気を強く保とうとしている姿を、鮮明に描き出す。
そして、2番のAメロの最後。
サビのキーフレーズとして使われてきた「ばかだな」をつぶやき、ギターソロに入っていく。
ここまでのコトバを、声に出していたかはわからない。
もしかしたら、心の中でつぶやいていただけなのかもしれない。
でも、心の中だったとしても、ここでコトバが途切れてしまったんだろう。
押し寄せてくる感情の波が、唇を震わせて、声に、コトバにする余裕すら奪ってしまったんだろう。
そんなソロが明けて。
かろうじて振り絞ったコトバは、ついさっき口にしたものだった。
1番のサビと全く同じコトバを、ただ繰り返すだけで精一杯だった。
そしてそれをきっかけに、悲しみのダムが決壊する。
彼の今まで見せたことのない表情が、現実感を浮き彫りにする。
信じようとしなかった、信じたくないと思っていた心が現実を悟っていく。
抑えていた感情が、堪えていた涙が、表面張力の限界を超えて溢れていく。
そんな心情とシンクロするかのように、ドラムがリムショット(スネアの縁をたたいて「カッ」という音を出す叩き方)から、普通のショット(「タンッ」という音)に変わる。
もう止まらない。悲しみの感情が疾走する。
「何度もばかって言ってごめんね」と謝りながら、気持ちの昂ぶりはおさまらず、演奏の熱量は高まっていく一方。
最後に、涙と共にこぼれたコトバは「もう会『え』ないんだね」。
もはや何の防具もない、むき出しになってしまった心がこぼした、素直な悲しみ。
そのあとにはただ、激流となった感情が渦を巻いて、コトバにならない叫びを心の中で上げ続けるばかりだった。
というような、感じの曲。
これは、完全にボクの頭の中のイメージですが。
稀代の歌い手と、伝説的な演奏者たちが出会って生み出した名曲。
iTunesにもなければ、YouTubeにもなかったのですが、CDを買って一切の損はないと思うので、ぜひ聴いてみてください。
バイバイ。
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