「弱虫ペダル」のコトバ|頑張らないと期待なんかされない!!

自転車レースという、ややマイナーなスポーツを題材にしながらも、大人気となったマンガ「弱虫ペダル」(©渡辺航 / 秋田書店)より。



「才能がない」ということを「負けてもいい言い訳」にしてはならない



3年生3人・1年生3人というメンバーでインターハイを制した総北高校自転車部は、翌年にその3年生が引退・卒業したことで、メンバーの半分が入れ替わることに。

カリスマ的存在だった前主将に代わってキャプテンになったのは、1年前にインターハイメンバーを選抜するためのレースで1年生に負けた手嶋純太だった。


彼は、凡人だった。


『そこそこ』頭が良いから、戦略を立てて、チームメイトを勝たせることはできる。しかし、一人の選手としての彼は、一度もレースに勝てたことがなかった。そんな彼が3年生になり、前年度インターハイ優勝校の主将となったのである。


手嶋に才能がなかったのは、事実なのかもしれない。少なくとも、自分より才能のある誰かの存在を感じたことはたくさんあったのだろう。でももしかしたら、彼は「才能がない」ということを、負けてもいい言い訳にしていたのかもしれない。諦めの言い訳にしていたのかもしれない。


凡人だからこそ、才能のある人以上に謙虚に、必死に学び、もがき、這いつくばってでも結果を出しにいかなくちゃいけないのに。「オレには才能がないから」諦めるのではなく、「オレには才能がないから」努力と根性と気合と、精神論のオンパレードになったとしても結果を出すためにもがく必要があったのに。



「期待されるから頑張れる」ではなく、まずは「期待されるために頑張る」


手嶋が1年生の頃、同級生に「ホープ」と呼ばれた古賀という選手がいた。1年生にしてインターハイに出場した彼は、しかしそのレースで大きなケガを負い、2年生の1年間を棒に振ることに。そのケガが癒えた3年生、最後の夏、改めてインターハイに出場するために、古賀は手嶋に勝負を挑む。「代われ、オレが新しいキャプテンになる」と。


手嶋は古賀のあふれる才能をいつもうらやましく思っていた。妬んでいた、という方が適切な表現かもしれない。勝利を期待される彼に対して、「精一杯がんばれ」と声をかけられるだけの手嶋。

「オレだって期待されればもっと頑張るのに」

そう思ってふてくされたこともあった。


しかし、3年生になり、前年度インターハイ優勝校の主将となり、個人の勝利ではなく、チームの勝利の責を負う立場になったことで、手嶋は覚悟ができたのだろう。才能がないから諦めるのではなく、才能がないなら他人以上に努力と工夫をして、勝利を掴みに行かなければならない、という覚悟が。


そうなって初めて、手嶋は気付く。
期待されたから頑張るのではない。
頑張らないと期待なんかされない、ということに。



「期待されるから頑張れる」という側面も、当然あることだと思う。「頑張る」ことにも原動力は必要で、そのひとつとして「他者からの期待」があるというのは、とっても自然なことだと思う。

ただ、「期待してよ!」と言えばみんなが期待してくれるかというと、残念ながらそんな簡単にはいかない。人は何かしらの「結果」を目にすることで、未来へつながる希望の片鱗を目にすることで、初めて期待を抱くのだと思う。

だから「期待されるから頑張れる」以前に、まずは「期待されるために頑張る」フェーズが必要になる。期待に値する存在であることを証明する必要があるんだ。



諦めなかった経験を積み重ねる


インターハイ出場の座をかけた二人のレースは佳境を迎え、残り250m、最後のストレートに入った。「体力バカ」と呼ばれるほどの体力を持つ古賀に、今までどのレースでも一度も勝ったことのない、ゴール直前のスプリント勝負に挑む手嶋。


とっくに限界を超えた身体。今までなら「仕方ない」と諦めていたラインを乗り越え、勝利への執着心だけでペダルをこぐ。

しかし、残り150mのところまできて、古賀がもう一段回スパートをかけてきた。古賀にはまだ余力があったのだ。


残り100m、ついに古賀が手嶋の前に出る。手嶋に敗北を突きつけるために。
絶体絶命。突きつけられた敗北の二文字の前に、それでもまだ手嶋はあきらめない。
勝利のためにもがき、もがき、もがき続ける。



多大な努力を払ったのならば、それに見合った結果を手にしたくなるもの。
でもいつだって結果がでるとは限らない。
多くの場合、自分の努力以外の要素が存在しているからだ。


それでも、仮に結果が出なかったとしても、ボクは「諦めなかった経験」は大きな財産になると思っている。


諦めというのは、結構クセになってしまうもの。以前の手嶋のように、無意識に「ここまででいいや」と線を引くようになってしまうクセは、沁みついてしまうと本当に厄介なものだ。


それを防ぐためにも「諦めなかった経験」を積み重ね続ける。
動かしようがない結果が出るまでは、どんなに劣勢であっても「どうにかする方法はないか」と考え続けることを止めない。その習慣を強く意識し続ける。

それを繰り返していけば、きっと成功する回数は増えていくし、次第に結果を出せる確率も高まっていくのだと思う。



自分に才能があるかどうかわからないけれど、期待されたいし、期待に応えたいし。
そのためにボクも、諦めない経験をひとつずつ積み重ねていこうと思う。



ゴールラインを切る、まさにその瞬間まで結果がわからなかった、二人のレースのように。



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