BRAHMAN 「其限~sorekiri~」


もう20年近くも前の話。

ボクが中学生くらいの頃、メロコア・ハードコアブームが訪れた。洋楽ならGreen DayやOff Spring、邦楽ならHi-STANDARDやSNAIL RAMP、HUSKING BEEなどなど。

当時はLUNA SEAやGLAYに代表される一大ビジュアル系ブームも起こり始めていたから、当時の中高生のコピーバンドは、おおむねコア・パンク系かビジュアル系に大別されていたように思う。

中学生当時まだギタリストだったボクは、兄の影響もあってビジュアル系のコピーをメインにやっていた(ビジュアルそのものはコピーしなかったけれど)。


だから、今回ピックアップするBRAHMANも、メロコア・ハードコアと呼ばれるジャンルを代表するバンドで、当時からよく耳にしていたという程度の知識だった。


なので正直、今日の記事を書く資格は、ボクにはないのかもしれない。



映画「ブラフマン」との出会い

引用元:gekirock.com


昨年の夏ごろ、縁あってアートディレクターの箭内道彦さんにインタビューする機会があった。その当時、彼の初監督作品である映画「ブラフマン」が話題になっていて、インタビューを前に作品を見ておこうと思い立ち、その足で映画館へと向かった。


映画「ブラフマン」は、彼らのデビュー20周年を迎えるにあたって、かねてから親交のあった箭内さんが監督としてカメラをまわしたドキュメンタリー。

普段ドキュメンタリー映画はほとんど見ることがないし、BRAHMANの曲もほとんど知らない。そんなボクが映画を見に行くなんて、怒られやしないだろうか。そんな葛藤を抱きつつも、平日の夜遅く、公開から日が経っていたこともあり、心地いい混み具合の映画館の座席に腰をかけてみた。



ミステリー小説のようなカタルシス


映画「ブラフマン」は、動と静の境界線がものすごくはっきりとしている。
箭内さんによる関係者のインタビューと、楽曲の制作風景。
ほぼ、その2つの要素だけで構成されている作品だ。


失礼なほどに予備知識がなかったボクには、テロップも何もない映像に、誰が誰なのかも、会話の中に出てくる名前が誰を指しているのかもわからない。軽い異国情緒(?)の中で、徐々に会話が、デビュー前にバンドに所属していたメンバーの話へと移行していくことを把握する。


あ、そんな話までしちゃうんだっていうくらい赤裸々に語られていく、当時の苦しみや葛藤、もがき。傷ついたり、傷つけたりした様が会話から鮮明に描き出されていく。


序盤、何の話かわからなかった上に、話がいろんなところに飛ぶ構成がさらに混乱に拍車をかけ、もっと事前に情報を仕入れてくればよかったという焦りが生まれる。かといって途中で一時停止なんてできないのが映画館。そのまま流れに身をゆだねていくと、徐々にそれぞれの会話が伏線となっていることに気付き始める。


そして、全ての伏線が一点に帰結していく終盤。
そこでこの映画が、20周年のタイミングで制作された楽曲の壮大なメイキングムービーであることを知る。


まるでミステリー小説のようなカタルシス。
一切BGMを使用しない構成が、ラストシーンの主題歌をより際立たせる。

見終わった後の感覚は、初めて宮部みゆきさんの「レベル7」を読み終えた感覚に近く(とてもわかりづらい表現だけど)、初監督にしてこの作品を取っちゃう箭内さんに脱帽。
※これはボクに予備知識がまったくなかったから抱いた感想かもしれないけれど。



堂々・堂々


そんな映画「ブラフマン」の主題歌が「其限~sorekiri~」という曲。
映画「ブラフマン」は、BRAHMANの20年の足跡を現在の視点から描いた作品であり、同時にこの「其限~sorekiri~」の20年分の背景を解説してくれる作品だ。


映画を見た上でこの曲を聴くと、驚くほど歌詞の理解度が変わる。
歌詞の温度がまるで違うものになる。


その中でもボクに突き刺さってきたのは、シャウトされる「堂々」というコトバ。

もがいて、苦しんで。
傷ついて、傷つけて。
間違えて、認めたくなくて。
でも、時が流れて、年を重ねて。
間違いじゃなかったという信念と、
別のやり方もあったのかもしれないという後悔と。


交錯する記憶と感情の中で、それでも今できることは、ただひたすらに「堂々」とすること。
そんな覚悟にも似た背中が目に浮かぶような気がする。




ここまで書いてみて、やっぱりボクにはこれを書く資格はなかったかもしれないなと思う。彼らの想いを代弁できるほど、彼らのことを知っているわけではないし。
ただ、その程度の知識しかなくてもこんな記事を書こうと思っちゃうくらい、この映画「ブラフマン」は面白かったし、BRAHMANのエネルギーは力強いものだった。
もちろんBRAHMANファンにとってはたまらない作品だったろうけど、ボクのようにまったく予備知識がなくても楽しめる作品。


だから、葛藤を抱えつつも、ボクも堂々とこの映画と曲をオススメしちゃおうかと。
気を悪くされた方がいたら、素直にごめんなさい。



シンプルに曲を聴くだけでもとてもいい曲だけれど、ぜひともDVDで映画を見た後に、もう一度味わってほしい逸曲です。



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